『テトリス エフェクト』 プレイレビュー その1
遅ればせながら。
プレイステーション4用ソフト『テトリス エフェクト』を購入した。
そしてその日以来、我が事務所に流れる環境音がガラリと変わる。
ポポポポチャカチャカパーン!タラッタポポポポチャカチャカパーン!タラッタポポポポチャカチャカパーン!タラッタチャーン!ポポポポチャカチャカパーン!タラッタポポポポチャカチャカパーン!タラッタポポポポチャカチャカパーン!タラッタチャーン!テラララ~ン!ポポポポチャカチャカポポポポチャカチャカポポポポチャカチャカパーン!タラッタポポポポチャカチャカパーン!タラッタポポポポチャカチャカパーン!タラッタチャーン!ポポポポチャカチャカパーン!タラッタポポポポチャカチャカパーン!タラッタポポポポチャカチャカパーン!…………
って、耳から離れねええええ!!!!w
もうね、誰かしらが必ずコントローラーを持ち、大仏みたいな悟り顔で、
(#・д・)∞ ポポポポチャカチャカパーン!タラッタポポポポチャカチャカパーン!タラッタポポポポチャカチャカパーン!タラッタチャーン……!
てな感じで、『テトリス エフェクト』をプレイしているのよ……w これはエライことになったぞ。
……というわけでエンハンスから発売された気鋭の新作『テトリス エフェクト』のレビューを書きたいのだが、その前にちょっとだけ、自分語りをする。
『テトリス エフェクト』の作者はゲームファンにはおなじみ、あの水口哲也さんだ。『スペースチャンネル5』、『Rez』、『ルミネス』、『Child Of Eden(チャイルド オブ エデン)』などなど、“映像と音楽の融合”をテーマにした作品を数多く世に送り出す、日本のみならず海外でも高く評価されているゲームクリエイターだ。彼がゲームの向こうに見ている世界はあまりにも独特で、作られる作品も、「果たしてこれは、単純に“ゲーム”というジャンルで括ってしまっていいものだろうか……?」と、考えさせられてしまうものが多い。それゆえに、一瞬でも水口さんの作品を気にしてしまった人(……変な表現だが、そうとしか言いようがないw)は否応なく特異な世界に絡め取られ、色と音と光の世界の虜になってしまう。じつは俺も、2004年にPSP(プレイステーション・ポータブル)本体と同時発売されたアクションパズル『ルミネス』でその世界観に魅せられてしまい、以来彼の作品を追いかけるようになった人間である。
当然、1994年からファミ通で記者をやっていたので、水口さんの存在は知っていた。それこそ、『セガラリー』を作られたころから。しかしなかなか縁がなく、取材する機会に恵まれなかったのだが、この『ルミネス』についてはどうしても直接話を聞きたいと思ってコンタクトをし、晴れてインタビューをさせていただくことになったのである。それ以来、水口さんは何かと俺のことを気に掛けてくれるようになり、仕事がらみの付き合いはもちろん、プライベートでもたびたび飲みに連れていってくれたり、相談相手になってくれたりした。まだペーペーの若手記者だった俺にとって、ゲーム業界のこと、ゲーム作りのこと、そしてゲームクリエイターのことを教えてくれた水口さんは恩人以外の何者でもなく、いまでも足を向けては寝られないお方なのである。
というわけで、自分語り終わりw ここからはキチっと、『テトリス エフェクト』のことをレビューしていきたいと思う。
『テトリス エフェクト』はその名の通り、あの『テトリス』をもとにしたパズルゲームだ。根本にあるルールは『テトリス』そのものなので詳しく解説する必要もないだろうが、一応、超簡潔に説明する。
凸←こんなのとか、□←こんなのとか、L←こんなのとかとか、上から落ちてくる“テトリミノ”というブロックをポコポコと積み上げて消していく……という、その後のテレビゲームに計り知れない影響を与えた革命的なパズルゲームだ。
そういう意味では現代の“パズルゲーム”というジャンルの礎であることは間違いなく、洋の東西を問わずさまざまなアレンジの『テトリス』が開発されてきた。しかし、ポピュラーになりすぎたために“使い古された感”は否めなくなり、代わり映えのしない見た目に少々食傷気味になっている人も少なからずいるゲームだとも思う。
この『テトリス』というオーソドックスすぎる素材に、水口さんを始めとする開発者たちは魔法をかけた。“音”と“映像”と“同調”という、極めて“水口チック”で強力な魔法を。
『テトリス エフェクト』は、静かに、重厚に、そして地味に始まる。
「……ん?? なんか暗いな。大丈夫か……? 音も……しんみりしているし……」
なんだか、心配にさせられる。そんな気持ちを知ってか知らずか、テトリミノもどこか遠慮がちに降りてくる感じ。それでも、テトリミノが落ちてくれば条件反射的に操作をしてしまうのが人間という生き物なので、しばし沈黙と戦いながらひたすらパズルを作っていく。
気が付いたときには、音が変わっていた。……いや、テレビから流れてくる音だけじゃなく、自分の胸から響く鼓動が、さっきとは違うリズムを刻んでいたのである。
「ポポポポチャカチャカポポポポチャカチャカ……!」
口から洩れる息に、無意識のうちに音が乗っていた。それに合いの手を打つように、背景の映像が絶妙にシンクロしてくる。「あれ……!?」と我に返った瞬間に目に飛び込んで来たのは、開始当初の地味で暗い絵ではなく、俺の気持ちに同調したかのような光の洪水だった。
こうなると、もう止まらない。音と光に背中を押されながら、つぎつぎとテトリミノを積み上げていった(それ、ダメなやつやw)。
(#・д・)∞ ポポポポチャカチャカパーン!タラッタポポポポチャカチャカパーン!タラッタポポポポチャカチャカパーン!タラッタチャーン……!
つぎのステージでは、どのような音と映像が俺を酔わせてくれるんだろう? この先で俺は、どれくらいゲームの世界とシンクロできるのだろう……!
音楽というレールに乗って、降りてくるテトリミノ。それを光といっしょに捕まえて、会心の場所にハメ込む!
「あ!!」
と思ったら、一定時間、時を止めらる“ZONE”を使おう。これで一気に、形勢逆転だ……!
仕事の合間に「ちょっとだけ……」と思ってやり始めたのだが、気が付けば数十分の時間が経っていた。あぶねえ……。いま完全に無心になって、背景で泳いでいたわ俺……。
この、ついつい無心になってしまう状況、何かに似ているな……と思って考えていたのだが、さっき答えがわかったわ。
座禅だ。
『テトリス エフェクト』に夢中になっているときに心がいる場所、座禅のときに感じる小宇宙と似ているんだな。……うん、『テトリス エフェクト』は、アクティブな座禅だ。自分で言うのもナンだが、なんだかめちゃくちゃ腑に落ちたわ。
そしてふいに、初めて水口さんにインタビューしたときのことを思い出したよ。『ルミネス』を遊びながら、俺は水口さんにこんなことを言ったのだ。
「『ルミネス』をやって、思いました。パズルゲームの鉱脈って、まだまだ掘り尽くされていないんですね」
これに対する水口さんの返しを、俺はいまだに忘れられない。ペーペーの無邪気な言葉を聞いて、水口さんはこう答えてくれたのだ。
「ええ、掘り尽くされてなんていないんです。まだまだ、お宝は眠っていますよ」
『テトリス エフェクト』も、お宝のひとつなんだろうな。
じっくり遊ばせてもらいますね、水口さん。