大塚角満の熱血パズドラ部 第1000話
2012年2月20日。
その後のスマホアプリ……いや、日本のゲーム業界の勢力図すらガラリと塗り替えてしまう、怪物的なアプリが産声を上げた。
そのアプリの名は……もちろん『パズル&ドラゴンズ』。
『ラグナロク』など、PC用オンラインゲームの運営会社として一定の評価を得ていたガンホー・オンライン・エンターテイメントが放った手のひらに収まる小さなゲームは、配信された直後からとんでもない旋風を巻き起こすのだ。
『パズドラ』がリリースされた当時、俺が所属していた週刊ファミ通のオフィスは東京の半蔵門(靖国神社のすぐ近く)にあって、そこから歩いて3分も行かないところにガンホーもオフィスビルを構えていた。いわゆる“味噌汁が冷めない距離”ってヤツで、当時を知るガンホーの人たちと昔話になると、
「あのへん、食い物屋がまったくなくて……」
「近所にローソンができたとき、“神は我々を見捨てていなかった”と思いました……w」
なんて、共通の話題で持ちきりになる。そんな“ご近所さん”が、「ちょっと変わったスマホアプリを作ったみたいですよ」と俺に話を持ってきたのは、このころから携帯電話のコンテンツを専門に扱うメディア(ファミ通App)を運営していた中目黒目黒だった。
「“パズルRPG”ってジャンルらしいです。配信されたら、大塚さんも遊んでみてください。地元のメーカーさんの新作ですしw」
目黒はそう言って笑ったが、正直、俺はほとんど話を聞いていなかった。なぜなら当時の俺は“家庭用ゲーム機に関するニュース”を毎日追いかけていた立場で、カジュアルなソーシャルゲームがほとんどだったスマホアプリにまで手を出しているヒマはなかったから。
そのアプリがリリースされてからも、目黒は懲りずにメッセージを送ってきていた。
「例のガンホーの新作がサービスインしましたよ!」
「M神(熱血パズドラ部の初期に登場していた、俺と目黒の共通の友人の女子)がそのゲームにハマって、毎日のように質問を送ってくるんですがwww 「どのモンスターを育てればいいと思います?」とかw」
「知らんがな」
俺のつれない返事にガッカリしたのか、目黒がそのアプリの話題を出すことは減り、いつしかまったく触れなくなって、2ヵ月ほどが経過した。
そんな、2012年4月--。
目黒が再び、Skypeでこんなことを言ってきた。
「大塚さん……騙されたと思って、『パズル&ドラゴンズ』ってアプリを遊んでみてください!!」
ゲームというものにそれほど興味がなく、なにごともテキトーなスタンスで臨む目黒が、ここまで声を大にして「遊んでくれ!」と主張してくることは珍しかった。……いや珍しいどころか、ゲームを薦められたのは初めてのことだったかもしれない。
「そこまで言うんだったら、ちょっと遊んでみるよ。でも忙しいから、さわりだけな」
その日は確か、週刊ファミ通の締切が何本も入っていて、ホントの本気でテンパっていたと思う。でもやると言った以上、あとで感想を求められたら困るので、序盤の序盤だけ触ってみようと思った。そのうえで、
「んー……やっぱ俺、スマホのアプリは合わないかも^^;」
そう告げてお茶を濁そうと考えていた。
そして--。
ふと我に返って窓の外を見ると、真っ青だった春の空が茜色に染まっているのが確認できた。耳を澄ませば、カァカァと家路を急ぐカラスの鳴き声も聞こえたかもしれない。
「あれ……? おっかしいな。ついさっき、お昼だったのに」
キョトンとしながら机に目を移すと、部下が俺の机に積み上げた原稿とゲラが、いままさに表層雪崩を起こすところだった。グラグラと不安げに揺れる紙束のアチコチに、「早くチェックしてください!!!」、「今日校了分です!!!」と、必要以上にビックリマークがついた付箋が貼られていたことを、ナゼか鮮明に覚えている。俺が『パズドラ』なるアプリを遊び始めてから、いつのまにか5時間ほどが経過してしまっていた。つまり、文字通り時を忘れるほど、心奪われてしまっていたのだ。
「ふぅ……。そうかそうか……。そういうことか……」
編集部中から注がれる「角満、早く仕事しろよ!」という矢のような視線を痛いほど感じながらも、俺は目黒にSkypeを送った。
「……俺、明日スマホを機種変してくる!!!」
そう書いて……。当時、パズドラはiOSでしか配信されていなかったので、そのころ俺が使っていたAndoroidoではプレイすることができなかったのだ。
Skypeの向こうで、目黒はニヤリと笑ったことだろう。「しめた!!w」と。返す刀で、こんなことを言ってきたのだから。
「じゃ、ブログをお願いします!w 逆鱗日和みたいな、パズドラのプレイ日記をぜひ!!」
「えええええ!!」と口に出しながらも、俺は笑って返した。
「そうだな。ゲーム内容的にたくさん書くのは難しいかもしれないけど……この圧倒的な“楽しさの瞬発力”を持つゲームのことを、広く世に知らしめていきたいな!!」
こうしてスタートしたのが、ファミ通Appを舞台にした“熱血パズドラ部”という名のプレイ日記だ。いろいろなところで書いてきたが、最初は、
「20話も書ければいいかね……w」
というところから始まり、そのうち、
「単行本1冊分……50話書いたら進退を考えようか^^;」
となった。そして実際に1冊目の単行本が発売されると、
「もうちょっとだけやろう」
と欲が出て、結果……w
「キリのいい200話で」
「強くなってきたから300話もいけるかも」
「いっそ500……」
「ここまできたら700くらいは……」
「いまさら止められないから800……」
「更新やめたら死ぬかもしれないので、900までは……」
「もう終わらないかもしれない」
……ってことで、本日ついに、パズドラ8周年のその日に通算1000話に到達いたしました!!! やったぁぁぁああああ!!!! ホントにここまでこれるなんて、考えてもいなかったよぉぉぉおお!!!><
単一タイトルのプレイ日記で1000話って、何度も書いてきたけど前人未踏の境地だと思います。もう二度と、自分でもこんなに書くことはできないと思うし、やるつもりもない(笑)。そういう意味では、オノレの中のアンタッチャブルレコードになるんじゃないかと確信している次第です。
ここまで続けられたのは、自分ががんばったのはもちろんなんですけど(オイ)、まわりの人の支えがとてつもなく大きかったと思います。勝手にブログに名前を出されている多くの仲間たち、ふだんから仲良くしてもらっているパズドラ開発チームの面々、そして、たくさんの読者の皆さん……。そのどれが欠けても、1000回には到達できなかったと思います。
これほど心から、お礼を言いたくなったのっていつ以来だろう……。いま本当に、心の底から、皆さんに感謝をお伝えしたいです。
本当に、ありがとうございました!
1000回を迎えたことで完全に燃え尽き症候群になりかかっていますけど(苦笑)、パズドラのサービスが続く限り、これからもコツコツと書き続けていきます。毎回毎回、毒にも薬にもならない記事ですけど、最初に思った、
「この圧倒的な“楽しさの瞬発力”を持つゲームのことを、広く世に知らしめていきたい!!」
という気持ちはいささかも変わっていませんので、今後もがんばって書き続けようと思います。
さ~て……!!
仕事がメチャクチャやばいことになっているけど、今日は飲みにくり出すぞ!! 自分へのご褒美と、そしてパズドラ8周年を祝って!!!
では皆様、今後ともよろしくお願いいたします!!
ありがとーーーーーー!!!!!
“超熱血パズドラ部”に関するお知らせ
◆ファミ通Appに引っ越ししました!
このたび、さまざまな理由から、超熱血パズドラ部を当サイトから切り離し、生まれ故郷である“ファミ通App”に引っ越しさせることになりました!