大塚角満の熱血パズドラ部 第675話
前回“安室の女~誕生編~”の続きとなります。
と思い返すと、同僚のたっちーの行動はそれ以前からおかしくなっていたと思う。
たとえば冬のある日、出社早々いきなり、
「なあなあ!! 社用車でRX-7買おうぜ!!」
と言ってきたことがある。そのキラキラの笑顔は、思いもよらない大物のウ〇コが出て望外にスッキリし、トイレから喜びのロケットスタートを決めたときの飼いネコを思わせるものがあった。しかし……唐突に社用車!? それも、どう考えても社用車には向いていないと思われる、スポーツカーのRX-7だと!?
「お、オメーは朝っぱらから何を言ってんだ?? そもそも、RX-7がどんなクルマなのか知ってんの??」
当然の疑問を口にする俺に向かって、たっちーはここぞとばかりに説明を始めた。
「知ってるに決まってっだろ!!! マツダが生産していたスポーツカー、その名も“サバンナRX-7”! 2002年8月に、自動車排出ガス規制の強化を受けて生産を終了するまでに累計生産台数は81万台を誇った、マツダを代表する車種のひとつ! 同社自慢のロータリーエンジンを搭載するクルマで、モータースポーツでの活躍も目覚ましかった。さらに……」
延々と続くRX-7の解説を、俺は茫然と聞き続けた。俺のこのクルマに関する知識は、
(『よろしくメカドック』で主人公のライバルとして登場した那智渡が、フルチューンのRX-7に乗っていたっけ……)
ってことくらいだから、たっちーがどれだけ異様なのかがわかる。
また、こんなこともあった。
ある日、やはり唐突に、つぎのようなことを言ってきたのである。
「なあなあ、キミって“二つ名”って持ってないの??」
ふつうに生活している限り、二つ名なんてものに思いを馳せる人間はそうそういないに違いない。俺、大いに困惑しつつも何とか回答した。
「ふ、二つ名?? えーっとそれは……ペンネームのこと?? だったら“大塚角満”がペンネームだからそれにあたるかね?? あ、いや、二つ名ってことだと違うな。『逆鱗日和』では“世界一のガンランサー(笑)”ってのが、いわゆる二つ名になってるよ。カッコワライまで含むね。ここ重要でね」
189文字に及ぶ俺の回答を、たっちーは心の底からつまらなそうに聞いていた。
「ふーん」
傷つく俺を尻目に、彼女が続ける。
「オメーのことはどうでもええねん。でもナルホド、そういう異名みたいなものはリアルに存在するんやな。ふーむ」
たっちーが何を考えていたのか、このときはまったくわからなかった。
決定的だったのは、つぎの出来事だった気がする。
ある日、またまたヤツが突拍子もないことを提案してきたのだ。
「なあなあ。ハンコを作ろうと思うんやけど。事務所に置いておく用のさ」
ここまでは、いたく常識的な提案だ。なので、俺は言ったのである。
「あ、いいね。じゃあ、俺のもついでに注文してよ」
たっちーは、ニッコリと頷いた。「オッケー! じゃあ、3本やね」。
「うん、3ぼ…………」
そこまで言いかけて、俺の口が止まった。
この事務所には現状……2名しかいない。“大”と“た”の2本があればコト足りるはずなのだ。
「3本……って、なんで? あ、もしかして代表印みたいなのを考えてる??」
俺の疑問に対し、たっちーは力強く首肯した。
「うむ!! まあ、そんなところやな!!」
そして数日後--。
届いたシャチハタを捺すとだな……!!!
俺はひっくり返った。
「ふ、降谷って……どこの社員!!!?? いいい、いつウチの事務所に入ったんだ!!!!???」
言われたたっちー、
|;・`ω・)
こんな顔で説明する。
「まあ、細かいことは気にするな。この“降谷印”に関しては、わしのポケットマネーから出しておいたから。無問題や」
何が無問題なのか、ますます意味がわからなかったが、ヤツがいわゆる“安室の女”であると知った後になって、すべての点がつながった。
RX-7は、安室透の愛車であった。
二つ名は、安室透が“バーボン”、“降谷零”、“安室透”という3つの名前を使い分けていることから興味を示したものだった。そして降谷印も、この流れによる。たっちーの行動のベクトルはすべて安室透に支配されていて、気が付けば事務所のあちこちが安室透に浸食されていた。
さらに、↓こんなことまで言ってきたのであった。
「わしはここ2年ほど、パズドラから遠ざかっておった。その間、パートナーを失ってしまったキミには苦労をかけたものだ。しかし……ついにわしは復活する!!! いや止めるな!!! もうわしは前しか見えぬ!!!」
俺はアクビをしながら、つまらなそうに彼女に言った。「へーへー。サンデーコラボで、安室透が入ったからな」。たっちーはドンッと机を思いっきり叩き、つぎのような宣言をした。
「わしは“安室の女”として、サンデーコラボガチャで必ずや安室透を手に入れなければならない。調べでは金タマゴなので、確率的にはそれほど低いものではなさそうだが……欲しいものほど手に入らないのがナントカセンサーの怖いところ」
ゴクリと唾を飲み込み、たっちーが発言の核心に触れた。
「おそらく、課金をせねばならないだろう。ついては……我が社のビジネスカードを登録し、経費でガチャを回させていただこうかと……^^;;;;;」
俺は口から火炎を放射した。
「ふふふ、ふざけんなぁぁあああああ!!!!!(大激怒)」
さて、このクダラナイ話の顛末は……?
次回、完結ですw
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