大塚角満の熱血パズドラ部 第674話
俺のプレイ日記、熱血パズドラ部や逆鱗日和ではおなじみの登場人物、“同僚の美人ドSゲーマー・Tさん”こと“たっちー”は、筋金入りのオタク女である。いわゆる“腐”ってやつ。こう言うとたっちーは、
「はあ??? 腐ってねえよ!! わしは“熟”や!! いい感じに熟しているオタクなんや!!!」
と、オタクであることを自供している。
今回、ファミ通Appの定位置を飛び出し、ここで“熱血パズドラ部外伝”を書くのには理由がある。
“あまりにもゲーム内容とかけ離れているから”
というのが理由のひとつだが、いちばん大きいのは、
“以前勤めていたところとは違う出版社に関わりのある話だから”
ということになろう。まあそれは、読んでいただければわかります。
ここで、時計の針を今年の春に巻き戻す。
ある日のこと。
事務所にて、1本だけ長くなった不気味な眉毛を折って遊んでいると、背後からたっちーが声を掛けてきた。
「なあなあ、キミってよく本を読んでるやん? そんで、妙なことを知ってたりするよね」
俺、ピクリとも眉を動かさず、あいまいな返事をする。「うぅ」。気にせず、たっちーが続けた。「コウアンについて詳しかったりする?」。
ここで初めて、俺はたっちーの言い始めたことに興味を示した。
コウアン……って、どのコウアンだ? 考案か? それとも……アンコウを逆さに言った業界用語?? まさか……公安ってことはないよな?? その疑問を、そのまま口にする。
「コウアン……って、アンコの仲間かなんかかね? それなら俺、あんま詳しくは」
言いかけたところで、たっちーが、
(#`・д・)
↑こんな顔になった。
「どんなコウアンやねん!! アンコとかどうでもええわ!!! そうじゃなくて、公安!! 正義を守る公安だよ!!」
なぁんだ、やっぱりそっちか。俺、長かった眉毛をブチリと引っこ抜いた。
「なるほど、そっちだったか。……でも残念ながら、とくに詳しくはないな。お世話になったこともないしね」
「キサマごときに聞いた、わしがバカだった」
たっちーは失礼なことを言って肩を落とすも、すぐにつぎの発言に移った。
「じゃあさ、バーボンについて詳しい?? 飲んだことある??」
俺は(ん??)と不思議に思った。というのも、たっちーは酒を一滴も飲まないし、それゆえに酒の種類もビールとワインくらいしか知らない。そんな女が、なにゆえバーボンと……?
とはいえ俺はたっちーと違って、無類の酒好きである。バーボンについても、一家言あると言っていい。とたんにウキウキし、俺はペラペラと語り始めた。
「なるほどバーボンか! バーボンについて知りたいのか!! よかろう、いろいろと教えてやる。まず、バーボンはウィスキーだ。アメリカのバーボンで作られるウィスキーだ。トウモロコシが主原料で、独特の風味がある。同じウィスキー類のスコッチよりクセがあって、苦手な人は苦手だな。でな!」
ベロりと唇をねぶってから、俺はさらに話を続けた。
「俺は二十歳のときに初めて、バーボンを飲んだんよ! 親戚のおっさんが故郷の下仁田町でスナックをやってて、そのおっさんに言われたんだわ。“ヒデ、聞いてくれよ。おっちゃん、バーボンがいちばん好きなのに、みんな臭ぇ臭ぇって言って、誰も付き合ってくれねん。だからさ、今日はバーボン付き合ってくれい。タダでいいからさ”って。あ、ヒデってのは俺のことな。で、初めて飲んだからクソマズかったんだけど、勢いでふたりで1瓶開けちゃってサ。記憶はなくすわ、二泊三日酔いになって学校に行けなくなるわでたいへんで。でもそれ以来、バーボンが好きになってさ!」
この、328文字にもわたる俺の熱弁を、あろうことかたっちーはひと言も聞いていなかった。
「ふーん」
つまらなそうに義理で相槌を打って、こんなことを言うのだ。
「そんなことはどーでもええねん。わし、バーボンデビューしようと思っててな。で、これはどこで買えるのかと思って」
俺は驚いた。前述の通り、彼女は下戸なのだ。
「え?? なんでまた?? しかも、ハードリカーのバーボンと」
そこまで言いかけたところで、再度たっちーが話題を変えやがった。
「ときにキサマは、ゲーセンのクレーンゲームが得意と言ってたよな?」
コロコロと話題を変えるたっちーに、俺は必死に食らいつく。「お、おう。そんじょそこらのプロクレーン師より、俺のほうがうまいと思っているぞ」。ここで初めて、たっちーがニッコリと笑った。
「いいね!!^^ じゃあさ、今週の金曜日にゲーセン付き合ってよ! そんで、クレーンゲームで取ってほしいものがあんねん!!」
俺、「??????」と盛大に頭の上からクエスチョンマークを放出させるも、あいまいに頷いた。「お、おう」。
そして、金曜日……。
たっちーに連れられて、池袋のゲーセンに出向いた。見ると不思議なことに、クレーンゲームのフロアーに女子があふれている。
(む……? いつからクレーンゲームは、女子に人気のコンテンツになったんだ……??)
そんなことを考えながら、ナゼか鬼の形相で「こっちこっち!! 急げやコラ!!」と怒鳴るたっちーについてゆく。そして、
「これや!!! これらを頼むで!!!」
夜叉のようなたっちーの命令に従い、悪魔的に設定のヒドいクレーンゲームで手に入れたのが↓これらの景品である。
アムロ~~~~ん……
このとき、俺はまだ、たっちーがいわゆる“安室の女”であることを知らなかった。ただ言われるがままに、クレーンを操作するだけの男だったのだ。
それがまさか、遠くない未来に、自分にも影響を及ぼすことになろうとは…………。
……って、熱血パズドラ部外伝と銘打ちながら、パズドラの話が1ミクロンも出てきてない!!!(苦笑)
まあこの記事、続きモノです! 最後には必ずパズドラの話になっておりますので、呆れずについてきていただけたら……w
長くなるので、次回に続くw
※ちなみに、3話ほどで完結する予定!w
“超熱血パズドラ部”に関するお知らせ
◆ファミ通Appに引っ越ししました!
このたび、さまざまな理由から、超熱血パズドラ部を当サイトから切り離し、生まれ故郷である“ファミ通App”に引っ越しさせることになりました!