【モンハンワールド】逆鱗日和 第35回:覚えられないヤツら
同僚の美人ドSゲーマー・たっちーが、何気にコツコツと『モンハン:ワールド』を進めている。無事に上位ハンターにもなっていて、いよいよ、ヤバい連中との生存競争が始まるスタートラインに立ったところのようだ。
そんなある日のこと。
「上位になったんだから素材集めをがんばって、早めに着替えたほうがいいぜ」
と俺が忠告したところ、「じゃあ手伝え」(たっちー)ってことになって、いっしょにクエストに出ることになった。作りたい武具の方向性が決まっていなかったので、
「では未クリアーのクエストをやりつつ、方針を決めていこう」
と話して、まずは古代樹の森に出向くことにしたのでありました。
古代樹の森で出会う大型モンスターは、ドスジャグラス、アンジャナフ、プケプケ、トビカガチ、レウスレイア夫婦、そして神出鬼没の爆撃機・バゼルギウスってところか。そいつらを相手にしつつ石でも掘って、ぼちぼち武具の絞り込みを計っていこうと思っていた。
確か、討伐目標がアンジャナフのクエストだったと思うが、森の奥地に進んでいくとさっそく、バッサバッサとリオレイアが飛んできた。その姿を見た途端、たっちーがわめく。
「レイヤアアアァァァアアアア!!!!」
俺、シラケた口調で吐き捨てた。
「どこの聖闘士だよ。レイアだレイア。リオレイア。おめーいい加減、モンスターの名前を覚えろや」
これまでさんざん狩ってきたリオレイアですらコレなのだ。たっちーが『モンハン:ワールド』から新登場のモンスターの名前を覚えられるわけがない。クエストを進めるうちに何種類かの大型モンスターに遭遇したのだが、ものの見事に1匹も、名前を認識していなった。
ドスジャグラスとすれ違うと、「あw レゲエさん、どっか行っちゃったwww」。
トビカガチが遠くに見えると、「トブハナビいる!! あいつの素材欲しいねん!!」。
プケプケに至ってはひと言、「毒虫」。あまりにもあんまりなので再度、「キサマ、モンスターの名前覚える気ないだろ!!」と突っ込んだところ、意外な返しをされてしまったではないか。たっちーは俺に対し、こんなことを言ったのだ。
「確かに、わしはモンスターの名前を覚えられん。しかしそれを……おめーにだけは指摘されたくない」
な、なんだと? その言い草だと、まるで……俺も固有名詞を覚えられない人間みたいではないか。こう見えても俺は、へっぽこ3人組シーズン3の仲間、バキに、「大塚さん、モンハン用語をほぼほぼ完璧に覚えてて、若干引くレベルです。……“ファストトラベル”とか」と感心(呆れ?)されるくらいの男である(ファストトラベルを覚えられないバキもどうかと思うが)。その俺に向かって、なんたる暴言だろうか。なので、俺は怒った。
「なに言ってやがる。俺は、モンスターの名前は完璧だぞ。ナカグロ(“・”これのことな)がどこに入るのかすら、完全に頭に入っているからな!!」
するとたっちー、思いもよらないことを言った。
「モンスターの名前を知っているのは、ある意味当然やろ。それがおめーの仕事なんだからな! そうじゃないねん。キミはもっと日常レベルの固有名詞を、ぜんぜん覚えていないんや」
??? と、頭の上からクエスチョンマークを放出していると、たっちーはつぎのように続けた。
「……キミ、わしが社員食堂でいっしょにご飯食べてた女性社員の名前、憶えてる?」
「え」
と俺は絶句した。な、なにを言っているんだコイツは……。戸惑う俺を他所に、たっちーは畳みかける。
「ちなみに、毎週キミが出ていた会議にも出ていたで」
俺はうなだれて、白旗を上げた。「い、いや……。名前までは、ちょっと……」。
たっちーは頷き、さらに言葉の双剣を振り回した。
「じゃあ、以前おめーの部署を担当をしていた●●部の男性、お名前は?」
俺、しばし考えたのち、脂汗をダラダラと流した。
「す、すません……。ここまで、出かかって、いるん、ですが……」
たっちーの舌鋒は鈍らない。
「じゃあ最後。××を仕切ったりしていた△△部の男性、名前はなんでしたっけ?」
俺は完全なる敗北を認め、頭を抱えてのたうち回った。
「うわああああ!!! わからねええええよぉぉおおお!!!」
たっちーは勝利者の顔になって、地上50メートルの高台から俺のことを見下した。
「モンスターの名前を覚えられないわしより、キサマのほうが遥かに致命的なんや!!! さあ謝れ!!! すべての同僚にな!!!」
「わああああああん!!! ごめんなさいぃぃいいいい!!! 名前覚えるの苦手で、すんませんでしたぁぁあああ!!!><」
言葉の刃の痛みに震えながら、俺はただただ謝り続けた。
おしまい……。
『モンスターハンターライズ』プレイ日記 逆鱗ぶいっ! Vジャンプレイにて連載中!