【モンハンワールド】逆鱗日和 第21回:ハンターは、若手社員である
『モンスターハンター:ワールド』は過去のシリーズ作品と比べて、際立ってストーリーに重きが置かれていると思う。
新大陸、海を渡る古龍、調査団、それにまつわる人々……。
キャラの立った登場人物との交流を経ながら物語は進んでいき、美麗なグラフィックと相俟って、まるでCG映画を観ているかのような錯覚すら覚えてしまう。
とはいえ本質は“モンスターハンター”である。要所要所にストーリーは挟まってくるが、やることのメインは“モンスターを狩ること”だ。主人公であるハンターは調査団の5期団のメンバーとして、上司(団長や先輩ハンターたち)の指令に従ってフィールドに飛び出していくのである。
このへんの、ストーリー上の役割と、従来の『モンハン』の楽しみの絡めかたがなかなかにして絶妙である。ハンター(プレイヤー)は好き勝手に狩りに勤しんでいるつもりでも、それはストーリー上の“ピースのひとつ”にほかならず、やったこと(痕跡を集めたりとか、新たなモンスターを狩ったりとか)が調査団の発展に寄与していたりする。
……そう、物語の一連の流れを作っているのは主人公ではなく、団長や先輩ハンターといった“上司たち”なのだ。自由に振舞っているつもりかもしれないが、それは上司の手の平の上で踊っているのと同義であることを、我々は忘れてはならない。
そういう視点で見ると、主人公のハンターは相当な働き者であることがわかる。
……いや、“相当”どころじゃないな。“猛烈に”働き者だ。サービス残業も厭わない、従順でフットワークの軽い期待の若手社員……って感じがする。
そんな先入観を持ってアステラの風景を眺めていると、キャラクターどうしのやり取りが中小企業のソレに見えてくるからおもしろい。
若手社員(プレイヤーのハンターね)に、上司(団長)は言うのである。
「古代樹の森の調査は、5期団のキミらに任せたぞ」
上司に目を掛けられたと思った俺、快活に返事をする。
「わっかりましたッ!! 喜んでえ!!」
無事に戻ると、上司は間髪入れずにつぎの仕事を振ってくる。
「顧客(アンジャナフ)の資料(痕跡)が不足しているようだ。ちょっと、ひとっ走り行ってもらえるか?」
「イエッサー!! いますぐにっ!!」
それを見ていた先輩が、ここぞとばかりに乗ってくる。
「キミ、手空いてる? え? 空いてない?? まあそれはいいや。仕事頼みたいんだけど。陸珊瑚の台地にお遣いヨロシク!」
少々疑問に思いながらも頷かなければならないのが、若手社員のツライところである。
「は、はい! やっときます!」
若干手に余る仕事をなんとかこなしてアステラに戻ると、上司と先輩が手ぐすねを引いて待っていた。
「戻ったか! つぎは支店(3期団の研究基地)まで出張に行ってくれ!」と上司。
「あ! そのついでに、痕跡集めもヨロシク!」と先輩。
「は、はあ……。はぁはぁはぁ……」
さすがにヘロヘロになり、サービス残業でそれらを片付けて本社に戻ると、またまた上司が……!
「遅かったじゃないか! まあいい。つぎは……」
矢継ぎ早の指令と、どう見ても自席から動いていなさそうな上司の姿……。
ここで俺、現実とゲームとの区別がつかなくなって、思わず画面に毒づくのである。
「あ、あの……! へ、編集長はボクが走り回っているあいだに、何をされていたんですかねぇ……?(静かな怒り)」
アステラは、従業員数20名ほどの、中小企業の縮図である。
おしまい。
『モンスターハンターライズ』プレイ日記 逆鱗ぶいっ! Vジャンプレイにて連載中!