【ディアブロ3プレイ日記77】トレジャーゴブリンの大集団、老戦士を狂わす
俺が足を踏み入れたのは、まぎれもない桃源郷であった--。
「こ、これは……?」
生臭い瘴気に満ちたネファレム・リフトの奥底で、キョトキョトと挙動不審に蠢く小さな生き物……。こ、こいつらは--。
「リ、リッチマン……か?」
そう、彼らはリッチマン。正しくは“トレジャー・ゴブリン”とその名が伝う。滅多に遭遇することのない、ナントカスライムみたいなスーパーレアな存在だが、運よく会えて、さらに討ち取ることができたなら、そのものに巨万の富と溢れるほどの名誉をもたらすとされている“座敷童”みたいな生き物である。
……そう、トレジャー・ゴブリンはレアなのだ。そうそう簡単には会えないのだ!!
そ、それが……(((;゚Д゚)))
俺の目の前に、誇張ではなく無数のトレジャー・ゴブリンがいる……。見た瞬間、
「え! え、あ、え!? い、いち、にぃ、さん……」
驚きながらも数えようとしたが、すぐにあきらめた。数えるヒマがあったら……1匹でも多くこいつらを倒さないと!!!
これは、ふいに足を踏み入れてしまった桃源郷で夢魔たちに踊らされた、憐れな老ネクロマンサーの記録である……。
呼び起こされた、少年時代のトラウマ
とはいえ俺は過去にも、同じような光景に出くわしたことはあった。
ふつうは1匹で現れ、
「ひゃひゃひゃい!! へっへぇ~~~!!!」
なんて、人を小バカにした解読不能の音声を発して逃げ回るトレジャー・ゴブリンが、ナゼか7、8匹の群れとなって固まっているゾーンに--。そのたび、俺は全身に「ぞわぞわぞわ~~~!!」と盛大な鳥肌を発生させていた。ふだんは集まっていないモノが集合体になっているのを見ると、条件反射的に「うわわわわ!!」と思ってしまうのである。
おそらくこれ、幼少期に経験したいくつかのことがトラウマとなって、俺に“トライポフォビア”(集合体恐怖症)を植え付けているんだと思う。
もっとも強烈な体験は、昔どこかのエッセイで書いた記憶があるが、小学校5、6年のときに見てしまった“毛虫”の大発生現場だ。
俺は生まれも育ちも群馬県の下仁田町なのだが、ここは昔も現在も超がつくド田舎で、よく言えば豊かな自然が色濃く残る、昭和の原風景みたいな場所である。
そんな田舎の実家の庭に、大きな桃の木があった。この桃の木をひさしにするように真下に車庫があって、近所の子どもたちの格好の遊び場になっていた。当時は缶蹴りやドロチン(一般にドロケイと言われている遊び)が定番の遊びで、物陰ができる桃の木と車庫は抜群の隠れ家になっていたのだ。
その日も俺はいつものように、幼馴染と車庫のまわりで遊んでいた。季節は秋で、車庫のまわりにたくさんのキキョウが咲いていたことをよく覚えている。俺は子ども心に紫色のこの花が好きで、幼馴染連中にこんなことを言ったのだ。
「ちょっとキキョウ見てくる! 車庫に入ってさ!」
車庫とは言っても、トタンでできた壁と屋根があるだけで、作り自体は安っぽかった。言いながら車庫に飛び込み、群生するキキョウを見つめていたとき、俺は“妙な視線”が注がれているのを確かに感じた。それも一対の目じゃなく……もっとたくさんの、それこそ“無数”の視線を--。
「え?? え……?? な、なんか、変だな……」
ブワワワワッ! と全身に広がった絵に描いたような鳥肌。幽霊に見つめられたら、こんな状態になるのかもしれない。
恐る恐る振り向く少年・角満。すると……そこにいた数千匹、数万匹の“それ”と、「バチッ!」と音がするほどの勢いで目が合ってしまった。俺は漫画のように「あ、あわ、あわわ……」と震え声を出し、ついでにちょっと小便もチビってから叫び声をあげた。
「け、け、け、毛虫ぃぃいいいい!!!! 毛虫がぁぁああああ!!!!」
そう、そこにいたのは、桃の木で大発生した無数の毛虫……。じつはそのときすでに車庫のすべては毛虫に覆われていて、下地が見えないほどになっていたのだ。あまりにもビッシリと毛虫で埋め尽くされてしまっていたため、逆に気づくことができなかったという(((;゚Д゚))) “木は森に隠せ”というが、まさにこのことだなと(ぜんぜん違う)。
その日以来、俺は毛虫恐怖症と集合体恐怖症を併発した。たいがいの生き物は大丈夫な俺だが、いまだ2、3ミリのちっこいやつですら、毛虫はダメなのである。
トラウマは、克服できたのか?
話が盛大に逸れたが、この日出会ったトレジャー・ゴブリンの巣は、過去最大規模のものであった。ざっと見たところ……300匹くらいいたかと思う(錯乱)。
おかげで俺の精神は、エラいことになった。
「う、うっわ!!! リリリ、リッチマンだらけや!!! た、宝の山や!! シャングリラや!!! うわ、すんげえ数!!! ききき、きっしょ!!!>< と、鳥肌が!!! うわわわわ!!! 気持ち悪っ!!!!」
喜んでるのか拒絶しているのか、自分でもよくわからん(苦笑)。
それでも、俺は老練のディアブラーである。
トレジャー・ゴブリンの群れに出くわしたことによる歓喜と、トライポフォビアを刺激する嫌悪感とのせめぎ合いの結果……ネファレムの血が、トラウマを凌駕した。
「お、追え!! 追うんだ影の軍団たち!! トレジャー・ゴブリンを1匹たりとも逃がすなよ!!! すべて討ち取って、ウハウハのセレブになるのじゃ!!!」
さあたいへんだ。数百匹(=十数匹)のトレジャー・ゴブリンと、前代未聞の鬼ごっこが始まったぞ。
しかしご存知の通り、トレジャー・ゴブリンは防御力が高いので、なかなか倒すことができない。その上、もたもたしていると、
「わーーー!! 逃げろ逃げろ!!」
ってんで、ポータルを出して異次元に逃走しようとする。
この、一斉に出された大量のポータル(苦笑)。もうこれ自体がトラウマになりそう。
加えて、ここはネファレム・リフトなので、まわりには屈強なモンスターたちがウヨウヨいる。
そんなヤツを相手にしていたらトレジャー・ゴブリンに逃げられまくるので、
「お、オマエらの相手は後でしてあげるから!! さきにトレゴブをやらせてくれ!! ……って、攻撃してくんな!! やめろやめろやめろ!!」
絶対に↑こういうことになる。そして、何度も死ぬ。
その結果……。
倒せたトレジャー・ゴブリンは、5、6匹だろうか……。ガチで30匹くらいはいたので、5分の1も倒せなかったと思う。そして、目当てのレジェンダリーやセットアイテムは、上に写っている1個しか手に入らなかったという体たらく……w
今回の稀有な出来事から得られたことは、たったひとつである。
「ト、トラウマを思い出しただだった……(((;゚Д゚)))」
もう、トレゴブの群れはこりごり……。
おしまい……w