ディアブロ3プレイレビュー 第31話
その恐怖体験をしたのは、さいたま市にお住いのOさん(仮名)である。
「あのときのことは……話したくないんじゃ。怖くてね……。思い出したくもない……」
青白い顔にじっとりと脂汗を浮かべながら、Oさんは声を絞り出す。本当に、口にしたくもないのだろう。でも取材班が粘り強く、「今後、同じ体験をされる方もおられるかもしれません……! 彼らへの注意喚起のためにも……」と説得したところ、Oさんはしぶしぶ、当時のことを語ってくれた。
死なない敵、現る
「あれは……そう、正月が明けてしばらくしたころのこと。首都圏に珍しく雪が舞った日なので、よく覚えておる。わしは“今日はもう家から出ずに、ひたすらゲームで遊ぼう^^”と決めて、コタツにビール、ピーナッツ、チーズを用意し、ついでに猫2匹を傍らに呼び寄せて“るーたん、今日もかわいいね^^”なんて、猫なで声を出しておったのじゃよ。……あ、ウチの猫の写真見る? かわいいで~^^^」
あ、いや、猫の写真は後ほどにでも……。それより恐怖体験のほうを……。
「なんじゃつまらん。まあええわ。わしはいつものようにニンテンドースイッチの電源を入れて、『ディアブロ III』を起動したんじゃよ……。ずっと育ててきたクルセイダーも強くなってきて、トーメントはX~XIIあたり、グレーター・リフトだと50前後でトレハンを楽しんでいたと思う」
そこでOさんは言葉を区切り、グラスに注いであったビールで口を潤した。
「そのときも、“さっそく、グレーター・リフトに潜ろうかな。レジェンダリー・ジェムを育てたいし”なんてつぶやきながら、グレーター・リフトの55階あたりにくり出したんだと思う。ファランクスに絶対の自信を持っていたころで、グレーター・リフト50前後だったら無人の野を行くが如く、ザコどもは無双できていたんじゃないかのう」
どうやら、話は核心に近づいてきたようだ。
「わしは強かったよ。塔門の力なんぞ借りんでも、ザコはわしが傍を通過しただけでジュワジュワと蒸発しておった。もちろん、エリートモンスターどもも同様じゃ。何発か殴っただけで消えていくので、わしは有頂天になっておったよ……」
ここで取材班は、言葉をはさんだ。
「……そんなに強いなら、恐怖体験なんてしないんじゃないですか? どちらかというと、モンスターたちのほうがOさんに恐怖していたと思いますし」
この質問を聞いた瞬間、Oさんは目に見えて身体を震わせた。そして身を縮こませ、震える肩を抱く仕草をする。
「……わしも、そう思っておった。“モンスターども、倒せるものなら倒してみろや!!”なんて口走ってすらいたと思う。そして実際、ボスのリフト・ガーディアンですら、わしには何もできずに消えていったからのう」
……ん? リフト・ガーディアンまで倒したなら、この話は終了だろう。いったいどこに、恐怖の要素があるんだ??
取材班のシラケた雰囲気を察したのだろう。Oさんはここで、ちょっとだけ苦笑いをした。
「ふふ……。“このホラ吹きジジイが、騙しやがったな”と思っておるじゃろう。……わしもな、ここで話が終わるならどんなによかったかと思う。……でも、終わらないのじゃ」
そしてOさんはいきなり、声を荒げた。
「……ここからなんじゃよ!!! “アレ”が出たのはッ!!! 嗚呼ああああ……!>< お、恐ろしい……! お、思い出したくもない……!!」
心霊話をしているとき、ヒソヒソ声から急に「お前の後ろにいるぞ!!!!」と絶叫して驚かせる卑怯な話し手がいるが、Oさんの口調はそれを思わせるものがあった。
でも……そうではなかった。
Oさんはここで、1枚の写真を取り出してみせた。「これを見るがいい……」。
その写真が↓コレだ。
取材班は首を傾げた。「……これは? ふつうのスクショに見えますけど」。Oさんが説明する。
「中央におるのがわしじゃ。わしのクルセイダーじゃ。その下に、青白いモンスターがいるのがわかるじゃろ」
確かに言われてみれば、青く光るザコ敵がいる。「ええ、いますね。これが、何か?」。
そしてOさんはついに、核心に触れる。
「この敵な……死なないんじゃよ」
取材班の目が点になった。「え??」。Oさんが震え声で続ける。
「わしも最初はグレーター・リフトの残党だと思って、軽い気持ちで攻撃をしておった。あとは街に戻るだけじゃったからな。しかしな……いくら攻撃してもこの敵は消えてくれず、どこまでもどこまでもわしのことを追い掛けてきたんじゃよ……!!!」
取材班も、冷や汗を流していた。ま、まさか……そんなことが……?
「火力が足りないのかと思って、わしはありったけのスキルを使って攻撃をした。でもこいつはすべてを受け流し、わしに襲い掛かってきたんじゃ!! しかもな……自慢のファランクスはこの敵に気づかず、茫然と立っているだけだったのじゃよ……!! わしにしか見えない、不死の亡霊……!」
Oさんはツバを巻き散らした。
「わしは恐怖のあまりタウンポータルを開いて、街に逃げ帰ろうとした。でもな、不死の亡霊は許してくれず、ポータルを開く仕草をしただけで噛みついてきたんじゃ……!!! 逃げてもどこまでも追いかけてきて、ポータルすら開かせてくれない……! これが恐怖じゃなくて、なんなのじゃ!!!?」
残された写真には、クルセイダーに不気味に追いすがる亡霊が写っていた。
取材班が言葉を失っていると、Oさんはさらなる恐怖体験を口にした。
「しかもこの体験は……一度だけじゃないのじゃ。わしはこの後も2回、不死の亡霊に出会っておる。2回目に出会ったときも写真に収めたので、どうか見てやってくれ……」
その写真が↓こちら……。
「ひぃ!!」
取材班から悲鳴が漏れた。この、赤い血まみれの怪物が、不死の亡霊か……。
Oさんは取材の最後に、こんなことを言った。
「不死の亡霊に出会ったら、とにかく逃げろ……! そしてヤツの隙をついて、別のマップに逃げ込むしか手はないぞ……」
さらに、続ける。
「でもな……。真に恐ろしいのは、不死の亡霊なんかではない。……この写真なんじゃよ!!」
Oさんが最後に取り出した写真を見て、取材班は恥ずかしながら失禁してしまったよ……。問題の写真が↓これだ。
Oさん(俺だけど)は言う。
「グレーター・リフト70をいい感じに攻略していたのに……死んだとたんにいっさいのボタンが効かなくなって、泣く泣くリセットさせられたよ!!!(泣) どんなバグやねん!!!! クリアーできそうだったのにぃぃいいいい!!!!(怒)」
『ディアブロ III』、ちょいちょいバグがありますが、それもひっくるめて楽しいです(苦笑)。
おしまい……。